さあ、雪まつりだ【百八灯】

作成: 日時: 2019年12月9日
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雪国の行事が冬に多いのはなぜだろう。年取り、正月、若木迎え、小正月、鳥追い、団子飾り、サイの神……春は山菜取りや田植え、夏は農作業、秋は稲刈りや冬への備えなど忙しいからか。それに比べて冬は膨大な静寂の時間が雪国にはある。また半年も雪に覆われる厳しい自然環境。冬の間、雪に囲まれた生活を楽しむ工夫なのか。そんな伝統的な雪国の祭りには、雪とともに生きる人々の想いが詰まっているにちがいない。

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祭りを伝える気概

「いい火にならないと、怒られるんだ」と笑いながら語るのは魚沼市折立地区でホテル「さかえや」を営む富永 修さん。魚沼の奇祭「百八灯」を運営する折立地区の運営メンバーのひとりだ。

毎年三月初午の前夜に行われる越後の奇祭「百八灯」は折立地区で江戸時代初期、寛永年間の初めから続くと言う伝統ある行事である。現在は三月の第一日曜日に行われているが、農家にとっては大切な作神様の『稲荷大明神』に豊年満作を祈願する祭だ。

日中男たちは稲わらを背負い、山の麓にある稲荷様の社から山頂に向けて雪山を歩き始める。雪道を歩きなれた地元の男たちにとっても大変きつい作業だ。雪があるとはいえ、三月の日差しは雪の照り返しもあり、少し歩いただけでもかなり暑くなる。「一人何往復もしながら、火を灯した時、麓からきれいに見えるよう長年の経験と勘で山の稜線に稲わらを配置してゆくんだ。」

夜のとばりが下りると、いよいよ祭りの始まりだ。花火の点火合図に、「火番」と呼ばれる火の番をする係全員が稲わらに点火する。「火番は火を灯けて終わりではなく、炎が真上に燃え盛るように、わらをほぐし、上からふんわり足してゆくなど、ここでも長年の経験がものをいうね。」男たちは白雪に覆われた山々が燃え上がる藁火の灯りに浮かび上がり、幻想的な雰囲気の中で百八灯のハヤシを合唱する。

「百八灯、 百八灯、 百の米が一斗五升、十文酒が十六ぱい十六ぱい」

百は一銭、十文は一厘にあたり、江戸時代の物価を計り知ることが出来るが、そのハヤシはお祭りを一層幻想的なものにする。「百八灯」はわずか十五分で消えるが、消えた瞬間幻想的な静寂が訪れ、半年雪に埋もれる折立地区の人々に春の訪れを伝えるのだ。

 

 

「百八灯」の祭りのメイキング

 

1 わらを集める

「百八灯」に必要なわらを集めることから始まる。稲刈りを終えた十月から「年行司(としぎょうじ)」と呼ばれる持ち回りで行事の運営をする係が倉庫にたくさんのわらを集めていく。

 

2 道付け

当日の午前にわらを置く稜線に道をつける。ここ魚沼市の折立地区は有数の豪雪地。かんじきを履いた男たちは三メートルを超す雪をかき分けながら雪道を一歩一歩踏み固めていく。そしてわらを置く位置に印をつけていく。

 

3 雪の祠(ほこら)をつくる

当日の朝、積雪が三メートルを超える豪雪の魚沼市では神様を祭っている祠を掘り出してお参りすることができないため、代わりに雪で祠を作り、ここにお参をする。お稲荷さまなので、油揚げやお酒をお供えする。

 

4 稲わらを山の稜線へ運ぶ

数回に分けて稲わらを山の稜線に沿って運び上げる。一人五~六束を背負い、麓から山頂まで二十分の距離を二~三往復する。

 

5 点火する

日中に運び上げていた稲わらに今年の豊作を祈願し、点火をする。現在は麓から打ち上げられる花火を合図に点火しているが、携帯電話もない昔は年行事が点火をするとそれを合図に順々に点火していったということである。

 

6 百八灯

炎がきれいに燃え上がるように「火番」と呼ばれる火の番をする係が一灯ずつついて、火の番をする。炎が上に燃え盛るように、わらを上から足してゆくなど工夫がいる。そんな工夫が幻想的な風景を作り出す。

 

7 消灯と下山

炎は十五分ほどで消える。消えたところから火番は下山し、慰労会を行う。今年の炎を出来について議論しながら今年の祭りの苦労を慰労する。

 

8 「百八灯」雪まつり会場

麓の折立地区の雪まつり会場では数々の演芸が雪の舞台で披露され、来場者へそば、トン汁、甘酒等もすべて無料でふるまわれる。また折立名物〝六人搗(つ)き〟で搗かれた餅も、大変好評という。
最後には豪華な花火の打ち上げも行なわれ、祭りはフィナーレを迎える。

 

 

詳細情報

[魚沼の伝統行事 百八灯]
2020年3月1日 18時30分開始
新潟県魚沼市下折立430
折立地区温泉組合 百八灯事務局 TEL.025-795-2166

[百八灯 わらしょい体験]
2020年3月1日 12:30〜(参加費有り)
百八灯に使用する稲藁を山頂に向けて設置するわらしょい体験です。江戸時代初期から受け継がれてきた伝統行事を体験できる貴重な機会となっています。越後の奇祭「百八灯」を一緒に作り上げませんか?詳細はお問い合わせください。
(一社)魚沼市観光協会 TEL.025-792-7300