織物に触れる

作成: 日時: 2023年8月29日
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織物に触れる ー南魚沼市ー

 

 南魚沼市塩沢にある酒井織物は越後上布の技術を絹織物に取り入れた塩沢絣の織元。素材の持つ風合いを損なわないよう、先端設備に頼ることなく手織りはもちろんのこと、大半の工程を手仕事で行っている。伝統的な織物技術を維持し、伝統工芸産業の振興及び指導に多大な貢献をしたことにより数々の表彰も受けている。
 木造の年季を感じさせる織物工場を20歳でこの道に入り以来62年間織物づくりに携わっている酒井 博さんに案内してもらった。「子供の頃から、父である先代や従業員がやっていた仕事を長年見ていた環境から、なんとなくやり方がわかっていました」。全工程に関わるという酒井さん、糸の不純物や汚れなどを取り除く精練、糸に撚りをかける強撚糸、絣糸をつくる絣づくり、機織り、販売など全工程に関わってきた。「精練は地下100mから組み上げた水で行います。日本酒だってお蕎麦だって綺麗な水でないとダメ。織物も同じ。酒造りにも使う綺麗な水で、大きな釜で煮ます」。
 ベテランの酒井さんに特に難しい作業を聞いてみた。「糸を一本一本つくる作業。それをちょっとでも手を抜いたりすると、いいものがよくならなくなっちゃう。手が抜けず、非常に細やかで根気が必要です。織物にも性格が出ます。気が平らな人は綺麗に、平均的に織る。母はよく、織子さんが織った物を、あ、これは綺麗だな、だれだれが織ったな、なんて話していました。別に名前が書いてあるわけじゃないのに」
 雪国観光圏には塩沢の他にも十日町市など織物の産地が多い。それは雪国の気候風土が織物に適していたからだ。麻の原料となる苧麻(別名カラムシ)が豊富でアンギンという編み物が縄文時代から作られていた。その後、大陸から織物技術が伝わり麻織物である「越後布」「越後上布」がこの地域の特産品として重用された。雪国の気候は湿度が高く、糸を紡いだり、撚ったり、織ったりする時、糸が切れるのを防いだ。雪はまた糸や布を雪さらしにして漂白したり、染色に必要な清らかな水を生んだ。また、半年豪雪に閉ざされる冬期間の主婦にとってよい内職となったし、雪国の女性は雪を耐え忍ぶ気候から我慢強さと手先の器用さを持ちその担い手として働いた。織り上がった製品は高価な割には軽量で、山間地で交通が不便でも輸送に支障が少ないなど、織物はまさに雪国の風土が生んだ産業なのだ。

 

決して簡単な仕事ではないが、最近は織子を目指す若い人も入ってくれていて、最近伝統工芸士の資格も取ったという。

 

「織物の作業は長年の経験が頼りです。1年の間でも湿気などでも微妙に違ってくるから常に真剣勝負です」

 

織元|酒井織物有限会社

記事で紹介した酒井織物さんは工場見学も行っている。要予約。
所要40分。3,300円/人。

新潟県南魚沼市塩沢41-2
☎️025-782-0078
https://www.sakaiorimono.com/