YUKIpedia 雪国コトバ図鑑

作成: 日時: 2019年9月18日
知りたい

世界には5,000以上の言語があると言われていますが、日本語ほどオノマトペが発達している言語は他には見当たらないと言われています。オノマトペとはフランス語で擬音語・擬声語・擬態語のこと。川が「さらさら」流れたり、水が「じゃぶじゃぶ」あふれたり、「ミーン、ミーン」と蝉が鳴いたり…というような表現。自然に関する表現が多いのは1万年以上も自然と共生して暮らした縄文時代の影響かもしれません。民族にとって言葉とはその民族を取り巻く自然、風土、歴史や文化がつまったもの。雪国に暮らす私たちにとって“雪”を表す言葉や表現が多いのは当たり前。そんな言葉を「雪国コトバ図鑑」としてまとめました。“言葉”から雪国を巡る旅にでかけましょう。

 

雪にまつわる言葉図鑑

 

しみわたり【凍み渡り】

凍った雪の上を歩くこと。雪国の初春の楽しみ。雪国も春が近づくと放射冷却で朝はぐっと冷え込む。すると積もっている雪が冷え込むことで固まり、埋まることなく雪上を歩くことが可能になる。普段は歩けない場所もすいすい歩くことができるので、子どもたちはその時期を楽しみにしていた。『十日町市史資料編8民俗』(1995)によると、「しみたかほい しみねかほい しみたしみた ほーいほい」「しみたかほーい しみねがほーい」などと歌いながら走り回ったという。

 

ゆきさらし【雪さらし】

「雪さらし」とは、織り上げた布を雪原の上に広げて日光にさらすこと。「越後上布」の生産には欠かせない工程である。日光の熱で雪が融ける時に「オゾン」という気体が発生する。このオゾンは布の繊維を白くする働きが強く、布がいっそう白くなる。「越後上布」は特に細い糸を使う。雪国は雪のおかげで空気に適度な湿り気があり、糸が切れにくいため、織物づくりにとても適した土地なのである。

 

ゆきほり【雪掘り】

除雪のことを一般的には「雪かき」と言うが、豪雪地帯の雪国観光圏では「雪掘り」と呼ぶことがある。当地では屋根よりも高く雪が積もってしまうことがあり、そういった場合は「家を掘り起こす」ことになる。そこから雪を“掘る”という言葉が自然に生まれ、使われているのである。道に積もった雪が軒より高い時はそれを掘り下げる。その雪もまた積み重なって高くなると、片付けて運び棄てる。

 

どかゆき【どか雪】

一度に大量の雪が降ること。大雪が珍しくない雪国観光圏でも2~3時間で50センチの雪が積もったり、何日も大雪が降り続いたりすることがある。雪が降るたびに融けることなく積もっていく。そのような「どか雪」の時には除雪した鉄道路線や道路、建築物の屋根は雪に埋もれてしまう。北陸地方では12〜1月の期間に「どか雪」が降ることが多い。

 

はっこい

「冷たい」の意味。「冷やっこい」がなまったものと思われる。体の芯から“冷たい”と感じるようなかなり冷たく感じた時に使う。例えば背中に雪が入ったり、長靴の中に雪が入ったりした時に使用する。雪で衣類や肌が濡れたままの状態にしておくと、水分が蒸発する際に急激に皮膚の温度が下がる。これによってしもやけが起こってしまう。「はっこい」を使う場面になったら、身体を拭いたり着替えたりしてしもやけを防ぐ。

 

ほんやらどう【ほんやら洞】

雪で作った洞のこと。一般的には“かまくら”と呼ぶが雪国観光圏の一部の地域では「ほんやら洞」と呼ぶ。
魚沼地域では小正月に「鳥追い」という田畑を鳥の被害から守るための行事が行われる。「ほんやら洞」という名称は鳥追唄の掛け声「ほんやら、ほんやら、ほ~い、ほい……」から付けられたとされる。子どもたちはほんやら洞を作り、その中で鳥追いの歌を歌ったり、餅を焼いて食べたりして楽しむ。

 

しんしん

雪が絶え間なく降る様子。雨と違い雪は音をたてずにひっそりと降る。そんな気配を人は音もないのに「しんしん」という言葉で表現する。冬の夜、「しんしん」と雪が降ると、翌朝は一面の銀世界だった……ということも多い。「深々」「沈々」とも書く。

 

ずぼる

雪の中に足が埋まった状態を言う。雪道を歩く時、他に人が歩いた後は雪が踏み固められているので、「ずぼる」ことはないが、一歩踏み間違えると膝まで「ズボッ」と埋まってしまうのである。そんな時は、長靴の中まで雪が入ってしまうこともままある。

 

ゆきんこ【雪ん子】

子どもの姿の雪の精。転じて現在では「雪を楽しむ雪国の子ども」のことを指す。新潟の民話から「雪童子」とも言う。「雪国に心優しい老夫婦がいた。2人は子どもがいなかったため、寂しさを紛らわすため、雪で子どもを象った人形を作った。するとある時子どもが現れ……。」

 

 

雪国トリビア

 

車を屋外に置いた翌朝はドアが開かない

冬に屋外に車を置きっぱなしにしておくと、車のドアもウィンドウも凍り付いて動かなくなってしまう。特に晴れた日は放射冷却でなおさらだ。そんな時は、石油ストーブの上にのせてあるやかんのお湯を車にかけるのである。

 

雪の多い年は2階の窓が玄関に

積雪量の多い当地では冬になると積雪と屋根から降ろした雪で家の周りが雪で埋まってしまう。そんな時1階の玄関は使えないので、2階の窓が臨時の玄関となる。

 

高床式住宅が多いのは何故?

大雪の時は一晩で50㎝の雪が積もる。そんな翌朝、雪に埋もれた車を出すのは一苦労。そのため雪国には1階を駐車場にした高床式の住宅が多い。荷物の出し入れも降り積もる雪もなんのその。また、住宅空間は2階からとなるため、家の周りにうず高く積まれた雪が採光の障害になることもなく、冬の生活も快適となる。加えて3階建て住宅は床面積を抑えつつ広い家屋にできるという利点がある。そのため固定資産税を抑えられることも高床式住宅が普及した要因に挙げられる。

 

例えばこんな過ごし方

 

雪国の暮らしや文化に触れる旅

東京からわずか70分のところにある異日常。雪国ならではの知恵と食文化、縄文文化体験など、雪国らしい過ごし方を満喫できるモデルプランです。
雪国文化の源泉は知恵です。半年近くものあいだ雪に覆われ、雪を克服するための知恵はいまも生き続けています。この知恵は、食に最も色濃く見られます。春先から晩秋にかけて、山菜を収穫し、それを塩漬けにしたり、乾燥させたり、発酵させたりして保存します。雪国の食文化を、このツアーで体験できます。
また、雪国は織物文化も特徴的です。冬の雪国の湿度の高さのおかげで、細くて繊細な糸でも切れにくいので、雪国の冬は織物に最適です。織物文化は、縄文時代の「アンギン」という布から始まっており、ユネスコの文化遺産「越後上布」まで受け継がれています。

 

雪国でよく見る「アレ」なあに?

 

雪国を訪れて見かける独特の風景。それらにもひとつひとつ名前がある。昔の人々は情報として記憶し、共有するために自然の情景にコトバをつけていった。雪国を訪れて「?」なものを見かけたら、土地の人に名前を聞いてみるのもいい。自分だけの「YUKIpedia」があなたをますます雪国通にするかもしれない。

 

だいこんつぐら【大根つぐら】

ワラでつくった雪室、大根つぐら

冬期に大根や人参などを保存するための保存庫。この大根つぐらは全て手作業で作られる。稲ワラを筒状に編み込み、ワラでできた蓋をし、保存庫として使う。寒さ厳しい真冬でも大根つぐらの中の野菜は凍ることはない。先人たちの越冬の知恵が詰め込まれている。

 

ゆきかべ【雪壁】

雪でできた壁のイラスト

道路側面にそびえる雪の壁。雪国では道路に雪が積もると除雪車が出動し、除雪作業が日常的に行われる。道路脇には雪がどんどん積み重ねられていき、その断面は雪の層が幾重にも重なり、ミルフィーユのようになる。

 

ねまがり【根曲がり】

雪の重みで根元が曲がっている木のイラスト

雪の重みで樹木の根元が曲がるさま。本来、樹木は真っ直ぐ上に伸びるが、雪国の山の斜面などに生える樹木は、雪の重みで根元が押され、曲がって伸びる。腰掛けにちょうど良さそうな形状で、雪国でしか見ることができない。

 

ゆきまくり【雪まくり】

山の斜面や丘陵地帯で稀に見られる自然現象。自然が作る雪だるまとも言われ、木の枝から落ちた雪や、風によってまくり上げられた雪が斜面をころころと転がり、表面の雪を巻き取りながらロールケーキのような形になる。

 

ゆきぼうし【雪帽子】

川の岩に雪が丸く積もっているイラスト

石などの上に半球状に積もった雪。雪国の河原の石や信号機、地蔵像などの頭頂部によく見られる。当地の雪は水分が多く含まれ、雪同士が密着しやすく自重で崩れにくいため、積もる際に丸みを帯びた形になる。

 

せっぴ【雪庇】

家の屋根に積もった雪が垂れ下がっているイラスト

家屋の屋根などからはみ出ている雪。屋根の雪の塊が傾斜でゆっくりと移動しできる。ふんわりとした見た目からは想像もできない程硬く重い。危険なので、雪庇を見かけても絶対にその下を歩いてはいけない。

 

ゆきがた【雪形】

山の残雪が動物の形に見えるイラスト

春から夏にかけ、山の斜面に残った雪の形。雪国に春の訪れを告げる風物詩とも言われ、雪解けが始まると残雪と岩肌が入り混じり、残雪が様々な模様や形を見せるようになる。昔はこの雪形を見て農作業の目安にしたり、農作物の豊凶を占ったともされる。

 

ゆきしたにんじん【雪下人参】

秋に採れた人参を冬の間、雪の下で熟成保存し収穫される人参。雪国特有の保存方法で収穫される雪下人参は、とても甘く臭みが無い。雪の中は適度な温度と湿度が保たれ、人参の熟成には最適な環境なのだ。自然環境を上手く利用し、雪国の知恵と文化を交えた最高傑作と言っても過言ではない。

 

雪国のくらしをのぞいてみよう

 

雪国のまちのイラスト

雪国では雪が降る前の準備が肝心。紅葉の時期には既に冬の支度が始まっている。秋の「雪国らしさ」を探してみよう!

 

らくせつしきやね【落雪式屋根】

 

勾配を急にし、雪が滑り落ちるように設計された屋根。屋根に登って雪を捨てる「雪おろし」を必要としない。

 

ゆきがこい【雪囲い】

家の窓に木で囲いをしているイラスト

冬の間、家屋や植木を雪の重みから保護する囲い。例年冬が訪れる前に設置される。壁や窓に横木を渡したり、藁や茅で覆ったり、植木の周りに竹を傘状に組む等方法は様々である。

 

かていようじょせつき【家庭用除雪機】

家庭でも手軽に扱えるいわば「小型除雪車」。らせん状の回転刃で雪を掻き取り、遠くに飛ばすタイプが主流。

 

スノーダンプ

一度に多くの雪を運ぶことができる人力除雪用具。プラスチック製のものと金属製の物があり、押し固められて硬くなった雪には後者が使われる。

 

りゅうせつこう【流雪溝】

除雪した雪を水で流すための穴

道路や線路の脇に設けられた雪の投入口。流水の力で雪を運搬する。投入口までは人力で雪を運搬する。除雪時以外は人が落下しないよう蓋を締める。

 

しょうせつぱいぷ【消雪パイプ】

道路の中央に敷かれた雪を融かす設備。地下からの水による噴水で雪を消す。他にも地面に電線や温水を通したパイプを這わせる、ロードヒーティングによる融雪方法もある。

 

じょせつしゃ【除雪車】

道路や線路の積雪を取り除く装置を備えた車両。雪を掻き分けたり遠くまで飛ばしたりすることで通行が可能となる。

 

たてがたしんごうき【縦型信号機】

冬期に積もった雪を夏まで貯蔵する施設。雪を利用して天然の冷蔵庫を作り出し、食料貯蔵や冷房などに使われている。

 

例えばこんな過ごし方

 

雪国の暮らしや文化に触れる旅

東京からわずか70分のところにある異日常。雪国ならではの知恵と食文化、縄文文化体験など、雪国らしい過ごし方を満喫できるモデルプランです。
雪国文化の源泉は知恵です。半年近くものあいだ雪に覆われ、雪を克服するための知恵はいまも生き続けています。この知恵は、食に最も色濃く見られます。春先から晩秋にかけて、山菜を収穫し、それを塩漬けにしたり、乾燥させたり、発酵させたりして保存します。雪国の食文化を、このツアーで体験できます。
また、雪国は織物文化も特徴的です。冬の雪国の湿度の高さのおかげで、細くて繊細な糸でも切れにくいので、雪国の冬は織物に最適です。織物文化は、縄文時代の「アンギン」という布から始まっており、ユネスコの文化遺産「越後上布」まで受け継がれています。

 

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