ごはん道 お米の歴史を知るべし

作成: 日時: 2021年9月23日
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おいしいお米ができるには、
おいしい歴史があるはずだ。

 

コシヒカリが日本一になるまでの歴史

 
1893
『コシヒカリ』の祖先のひとつ『亀の尾』の親を阿部亀次が発見。
1931
『コシヒカリ』の父にあたる『農林1号』が農林登録される。
1943
『コシヒカリ』の母にあたる『農林22号』が農林登録される。
1944
『農林1号』と『農林22号』の交配が行われ、秋には種子(のちに『コシヒカリ』になる)を取る。
1946
『農林22号×農林1号』の最初の種まきが行われる。
1947
『農林22号×農林1号』の系統のうち二〇系統が長岡農事改良実験所から福井農事改良実験所にゆずられ、翌年に種子がまかれる。
1948
福井地震発生。多くのイネが失われる中『農林22号×農林1号』は助かる。
1953
『農林22号×農林1号』は『越南17号』の系統名がつき、福井県から新潟県へ送られ試験栽培が開始される。この地域は他の地域に比べて良い成績を残す。量より質の時代が来ることを見越して、越南17号の奨励品種採用をすすめる。
1956
『越南17号』は農林登録され『越南100号』となり、國武正彦が越の国に光り輝く品種となるよう願いを込め『コシヒカリ』と命名する。
1965
倒れやすく、いもち病に弱いコシヒカリは新潟県内の平野部稲作地帯では作られない一方、南魚沼郡のコシヒカリは20%を超えて作付けされた。(新潟県平均10%)
1969
政府が米の生産調整を決める。
1970
生産調整、自主流通米制度実施。
1979
『コシヒカリ』が作付け面積日本一となる。現在も一位であり続けている。
2005
いもち病に強い『コシヒカリBL』が新潟県内に一斉導入された。

 

「コシヒカリ」の家系図

 
寒冷による飢きんと病害虫に悩まされてきた新潟の米は、寒さと病気に強い品種が昔から切望されてきた。そのため戦前より交配を重ねて品種改良が行われてきた。「コシヒカリ」の母親の「農林22号」は病害虫に強く、おいしい品種であるが茎が長く肥料をたくさんやると倒れやすいという欠点があった。父親の「農林1号」は冷害に強いが病気に弱い「亀の尾」を先祖に持っている。

 

量から質への転換期

 
高度成長期まではいかに多くの収量を挙げるかが米作りのポイントであった。しかし、戦後に学校給食法が施行されパン食が広まったり、高度成長期後には人口減少時代が来ると予想されていた。そのようなコメ余り時代に対応して量から質、つまり“おいしいお米作り”へのターニングポイント期を迎えようとしていた。「コシヒカリ」は将来を見越して開発されたお米であった。

 

魚沼地域に合った「コシヒカリ」

 
数々の品種改良ののち生まれた「コシヒカリ」はおいしいが倒れやすいという欠点を持っていた。信濃川中・下流地域の肥沃な土地とは違って、魚沼地域は肥沃でない土地のため肥料を少なく与えれば茎が長くならずに倒れにくいことがわかった。また、南魚沼地域は雪が多く春が遅い割には急に暑くなる気候のおかげで早生(わせ)品種の「越路早生(こしじわせ)」などの品種がうまく栽培できなかった。「コシヒカリ」は中生(なかて)品種なので田植えが遅いこの地域に合っていた。
*早生・中生…同じ作物であっても、生育の早いものから早生(わせ)、中生(なかて)、晩生(おくて)の品種に分類される。当地の米農家も生育時期に合わせていろいろな品種を栽培している。

 

日本と米

 
米は小麦、トウモロコシと並び世界三大穀物といわれている。イネ科の植物は高い繁殖力を持ち、1株にたくさんの種子をつける。中でも米は1株の稲から1,600〜1,800粒もの種子を取ることができる。ちなみに日本では小麦は120〜240粒、トウモロコシは500〜700粒ほど。また、狭い土地に密集して植えることができるので、日本のように限られた土地を利用しなければならない場合でも、たくさんの量を生産することが可能である。また、栄養価も高く、炭水化物やたんぱく質などのエネルギー源も豊富。

 

コシヒカリの血を引く品種たち

 
日本で栽培されている稲は、作付け面積1位のコシヒカリを筆頭にその子や孫やひ孫などの関係がほとんど。作付け面積2位の「ひとめぼれ」、3位の「ヒノヒカリ」、4位の「あきたこまち」もすべてコシヒカリの子にあたり、5位の「ななつぼし」以下の品種も大半がコシヒカリの系統。コシヒカリの食味の良さを受け継ぎ、各地の風土に合わせた育てやすい品種が全国の食卓に上がっている。

 
参考文献
『コメの歴史を変えた コシヒカリ』 著者/小泉光久
『最新版 図解 知識ゼロからのコメ入門』 監修者/八木宏典